Artist

ASIAN KUNG-FU GENERATION[JP]

report

1日目はトリ=WEEZERの直前に登場したアジカン。SEで流れ出した“新世紀のラブソング”のイントロに沸き上がる手拍子をそのまま“新世紀のラブソング”の高揚感へ導いて横浜アリーナをでっかく揺らし、“マジックディスク”の性急なビートへ雪崩れ込む!……というアルバム『マジックディスク』の鉄壁の流れに、フィナーレが近づきつつある1日目・横浜アリーナの温度がさらに上がる。ゴッチたち4人の表情も満足げだ。「こんばんは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONです! 今日はありがとうございます!」というゴッチの言葉を挟みつつ、ギター・ロックを鳴らすことの喜びそのものような“All right part2”のメロディをカラフルに花開かせて、会場一丸の大合唱を巻き起こしていく。そして“Re:Re:”“アンダースタンド”“遥か彼方”……1曲ごとに大歓声が沸き上がり、クラップがフロアを埋め尽くしていく。最高のロックのコミュニケーションがそこにあった。
「回を重ねるごとにね、お客さんがあったかくなっていって」と、オーディエンスに語りかけるゴッチ。「今回はね、ASHとかRENTALSとかWEEZERとか、自分たちが学生の頃から入れあげたバンドと一緒にやれて、本当に嬉しいんですけど……ASHから始まって、だんだんいろんな海外のバンドが出てくれるようになって。さあWEEZER!って時に、震災があって。もうできないんじゃないかなと思って。それでも『やるぞ!』って思って……自分内の復興ってあるじゃないですか? ここがどれだけいいフェスになっても、東北の復興には何の役にも立たないかもしれないけど、もう1回、ここで折れずに2日間盛り上がれたら、自分の中で今まで鳴らしてきたものを取り戻せるんじゃないか、助けを求めている人たちに想いを送れるんじゃないかという気持ちでこの2日間やっています。心を蘇らすというか、生き返って帰ってください!」……そんな言葉に続いて鳴らされた“迷子犬と雨のビート”“君の街まで”は、どこまでも深く、強く心に沁みた。
「この後WEEZERだね……そんなこと自分のステージで言うなって感じだけど(笑)。それぐらい楽しみなんだよね」と言いながら、“ループ&ループ”で再びアリーナを歓喜で包み込み、“リライト”“君という花”“ソラニン”で完全燃焼! WEEZERへの最高のバトンを自らつないでみせた。

そして。2日目ヘッドライナーとして登場したアジカン。電子音SEの静謐な空気を切り裂いて鳴り響く“リライト”!さらに“Re:Re:”のタイトなビートでアリーナ一丸の大ジャンプを巻き起こし、“マジックディスク”のダイナミックなアンサンブルがフロアの熱気を1つの巨大なエネルギーへと編み上げていく。「どうもありがとう! ほんとにほんとに、いろんな積み重ねを経て、今年もこのフェスができたんですけど……とても嬉しいです。こうしてたくさんの人が集まって、音楽で蘇る感じっていうかね。明日休みあるから大丈夫だけど……今日帰った瞬間から『現実』ってやつが始まる人もいるかもしれないよね。でも、何かを補給して帰ってください。俺は音楽があれば大丈夫!」というゴッチの力強い言葉に、残りわずかとなったフェスの時間を全身で謳歌しようというオーディエンスの熱気はいっそう高まっていく。そんなアリーナのエネルギーを、“All right part2”“アフターダーク”“ブルートレイン”“N.G.S”と新旧ナンバーを畳み掛けながらさらに増幅していくゴッチ、建ちゃん、山ちゃん、キヨシの4人。
「僕ね、『THE FUTURE TIMES』っていう新聞作りました! ミュージシャンが何やってるんだっていう意見もあるかもしれないけど……もう、この新聞でやりたいことは、『無関心を焼き尽くす』ってことですね。政治的な思想があるわけでもなくてね。いろんな意見を積み重ねていかないと、世の中よくなっていかない気がして。音楽もそうだと思うんだよね。いろんなものが交じり合うから、いろんな価値観が生まれていくんだし」……自らの信念と『NANO-MUGEN』の精神とが渾然一体となった決然とした言葉が“フラッシュバック”の切れ味鋭いサウンドや“未来の破片”“ソラニン”のエモーショナルなメロディと一体になって胸に響く。最高だ。
「一時は、『NANO-MUGEN FES.』できるかどうかわかんなくて、落ち込んでた時期もあったし。3月は音楽をやること自体が不謹慎みたいな。でも、電気うんぬんじゃなくて折れちゃった心があって。どうすんだ?みたいな葛藤もずっとあって。表現者面してさ、東北行って何かやるって、野次馬根性ないって言い切れんのかよ!って。でも4ヵ月経って、いろいろ考えて、いちばん大事なのは『自分はどうしたいか』であって。『偽善だ』っていうノイズなんてどうでもいいんじゃん?って。それはすべてのことに通じるんじゃないの?って。だから、このフェスは絶対成功させる!って。7月中旬で俺、完全復活!っていう気持ちでやってた。みんなもね、少しだけ心が軽くなったら、その軽くなった分を誰かに分け与えてあげるような気持ちで頑張ってほしいと思います」……大歓声! さらに“センスレス”“アンダースタンド”で生まれた祝祭感を、THE RENTALSのマット&ローレンが乱入した“君という花”の異次元の高揚感が上塗りしていく。
“転がる岩、君に朝が降る”で真摯に本編を締め括ったアジカン。鳴り止まないアンコール!「すごいね! 僕らがみなさんに向けて拍手したいぐらい!」と、再びステージに現れたゴッチが会場に向けて拍手。「また来年もやりたいんで、ぜひ遊びにきてください!」という言葉から“ループ&ループ”、そして最後は“新世紀のラブソング”。《ほら君の涙 さようなら旧世紀 恵みの雨だ 僕たちの新世紀》のフレーズが、2011年を生きる僕らの最高の福音となって降り注ぐ、圧巻のグランド・フィナーレだった。

■7月16日
  • 01.新世紀のラブソング
  • 02.マジックディスク
  • 03.All right part2
  • 04.Re:Re:
  • 05.アンダースタンド
  • 06.遥か彼方
  • 07.迷子犬と雨のビート
  • 08.君の街まで
  • 09.ループ&ループ
  • 10.リライト
  • 11.君という花
  • 12.ソラニン
■7月17日
  • 01.リライト
  • 02.Re:Re:
  • 03.マジックディスク
  • 04.All right part2
  • 05.アフターダーク
  • 06.ブルートレイン
  • 07.N.G.S
  • 08.フラッシュバック
  • 09.未来の破片
  • 10.ソラニン
  • 11.センスレス
  • 12.アンダースタンド
  • 13.君という花
  • 14.転がる岩、君に朝が降る

  • EC1.ループ&ループ
  • EC2.新世紀のラブソング
文/高橋智樹 | 写真/古溪一道・TEPPEI