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2012.07.15 (SUN) 即日レポート!!

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今回で通算10回目を数える『NANO-MUGEN FES.』。朝からのむせ返るような熱気にも負けないくらいの参加者の熱気で、横浜アリーナは開場前から包まれている。開場前のグッズ販売コーナーに並ぶキッズも、開場を今や遅しと待ち受ける人の列も、今にも期待感が顔からあふれそうだ。『NANO-MUGEN FES. 2012』、いよいよ本番である。
MC
開演間近の11:15、キヨシ&山田の前説コンビがステージに登場。
山田「みなさんのおかげで、『NANO-MUGEN』も、素晴らしいフェスに成長しました。ありがとうございます!」
キヨシ「僕もうれしくて、僕のフェスティバルも元気づけられちゃって!」
山田「……聞かなかったことにします。でも、苦情もいただいていて。荷物を2階・3階の座席に置いて席取りをする人がいて……」
キヨシ「そんなでっかい荷物は、俺のクロークにーー」
山田「言わせねえよ!(笑)。いや、ちゃんとクロークがあるんですよ!」
……といった凸凹MCも朝から冴え渡った(?)後、2003年・新宿LOFTから始まったこれまでの『NANO-MUGEN』ヒストリーが場内の巨大ヴィジョンに映し出される。そして、『NANO-MUGEN FES.2012』出演アーティストの名前が次々にコールされて……。
Dr.DOWNER
11:30、いよいよ開演! これまでにも『NANO-MUGEN CIRCUIT』で存在感を示しまくってきたDr.DOWNER、『NANO-MUGEN FES.2012』トップバッターとして横浜アリーナ初登場! 「初めて観る人も多いと思うけど……」と猪股ヨウスケ(G・Vo)自身もMCで言ってはいたが、1曲目“さよならティーンエイジ”からその爆音で終始会場を圧倒! 嘆きと怒号と悲鳴を同時に吐き出すような猪股ヨウスケ(G・Vo)のささくれた歌。苛立ちも違和感もそのままディストーション・サウンドに置き換えたようなサウンド……それらが一丸となって、横浜アリーナの空気をびりびり震わせていく。高橋"JEDI"ケイタのギター・ソロや“暴走列車”“ドクターダウナーのテーマ”爆裂連射に至るまで、ロックもパンクも舌を巻くくらいの名演だった。
MATES OF STATE
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今度は喜多&山田コンビがアコースティック・ステージに登場。「次のステージは、こちらのアコースティック・ステージで行われますので。集まれー!」(喜多)という呼びかけをきっかけに始まったのは、USカンザス州発の夫婦ポップ・デュオ=Mates Of Stateのアクト。ピアノ/オルガン/エレピ/アナログ・シンセなどオーガニックな音色の奥底から極彩色のハイブリッド・ポップ感をあふれ出させるコリー。長い腕を折り畳むようにして、疾走感あふれるビートから日だまりのような居心地の良さまで変幻自在な空間を生み出してみせるジェイソン。そして、“You Are Free” “The Re-Arranger”など、2人の歌が絡み合って絶妙のハーモニーを描き出す瞬間の、純度100%の透明感……ギター/トランペットをサポートに迎えたシンプルな編成越しに生み出される目映いばかりの音の粒子が、横浜アリーナを隅々まで満たしていった。
MOTION CITY SOUNDTRACK
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「続きましては、MOTION CITY SOUNDTRACK! 実は2005年ぐらいから、呼びたいリストに入ってて。やっと来てくれたよ!」……再び喜多&山田コンビがオン・ステージして呼び込むのは、USミネアポリスが生んだ爆裂泣き笑いロック5人組=MOTION CITY SOUNDTRACK! 「コニチワ! ボクタチハ、MOTION CITY SOUNDTRACKデス!」「アリガトゴザイマース! ボクハ、ニホンゴヲ、ベンキョウシテイマス……アア、ゴメンナサイ! スコシスコシ!」といったジャスティンの日本語MCもさることながら、何よりその、1音1音がスーパーボールのような弾力を持ったパワフルな演奏が最高! ジャスティンはじめ5人のプレイがシリアスかつエモーショナルに熱を帯びれば帯びるほど、よりセンチメンタルさとポップ感を増して胸に響く唯一無二のアンサンブルが、フェスの祝祭感と共鳴し合って、至上の高揚感を生んでいく。“My Favorite Accident”“Her Words Destroyed My Planet”といったシングル曲群から最新アルバムの“True Romance”まで40分に凝縮した名演!
KREVA
続いて、DJセットだけが組まれた巨大なステージ中央に堂々と立つシルエットは……『NANO-MUGEN』初登場・KREVA! 「そろそろやるか!」とひと声かけると、“基準”の《ふざけんじゃねぇ こりゃ完全腐ってる》の挑戦的なフレーズを横アリ狭しと響き渡らせ、そのまま“ストロングスタイル”“成功”を畳み掛ける。ゲスト・ヴォーカル=SONOMIとともに“ひとりじゃないのよ”“NO NO NO”を響かせ、「せっかくフェスに来たんだから、一緒に歌を作りませんか! 教えますから。ジャパネットたかたぐらい丁寧に教えますから!(笑)」とばかりにオーディエンスを“OH YEAH”のコール&レスポンスへぐいぐい巻き込んでいく。ラスト・ナンバーは“KILA KILA”。《吹き飛ばせ 黒い雲 追い風 向かい風 乗りこなせば キラキラ…》……ヒップホップとエンターテインメントの闘士ならではの連帯感と反骨心がギラリと光る、貫禄のステージだった。
SPACE COWBOY
KREVAのステージが終わるや否や、今度はDJステージから勢いよく飛ぶ「『NANO-MUGEN』、How are you doing?」の声。フランスが生んだ異色にして異能の爆音DJアーティスト、SPACE COWBOYことニコラス・ドレスティ、4年ぶり『NANO-MUGEN FES.』登場! あたかも爆風のような音の中から見事に快楽だけを取り出してみせるマジシャンのように、リミックスのカオスの中から時折アジカン“ループ&ループ”の一節を浮かび上がらせて会場丸ごとハッとさせたり、ハンドマイクのニコラスのジャンプと“TALKING TO YOUR SLEEP”の激烈タテノリ・ビートが横浜アリーナを震わせたりしている間に、30分のノンストップDJエクスプレスはあっという間に過ぎ去ってしまったのだった。
後藤正文@GUESTReALM
その頃、4階のゲストリアム・コーナーでは、なんとゴッチの弾き語りライブがスタート! 「ずっとここにいる人いるでしょ? いったい何をやってるのかと(笑)」など奔放なMCとともに、アコギを抱えてじっくり歌うゴッチ。9月リリースの新作アルバム『ランドマーク』から、喜多建介の作曲だという新曲を披露しつつ、ゲストリアムいっぱいのシンガロングを巻き起こしてみせる。「まだまだ仮設住宅で暮らしてる人もたくさんいるけど、報道も偏ってきて、仮設住宅のこととか報道されなくなってきてる。一緒に見守ってください」と、震災復興への想いを語るゴッチ。最後の“ソラニン”が、ひときわ力強く響いた。
ストレイテナー
一方、アリーナのバンド・ステージに登場したのはストレイテナー! 「アコースティック・アルバムを出して、昨日までツアーをやっていて。もったいないから、そのまま出ちゃえと。『NANO-MUGEN』はホームみたいなものなんで」というホリエアツシの言葉通り、『NANO-MUGEN』をともに作ってきたとも言える盟友が、今年は名盤アコースティック・アルバム『SOFT』を引っ提げ、満を持してアコースティック編成での初『NANO-MUGEN』出演! 滋味あふれるバラード・ナンバーに生まれ変わった“ネクサス”。ひなっちこと日向秀和のアコースティック・ベースとホリエのピアノ・サウンドが凛とした音空間を構築する“SIX DAY WONDER”。アジカンからのリクエストに応えて披露されたのは、楽曲の熱量よりも優しさが強く浮かび上がるアレンジの“TENDER”。シャッフル・ビートで高らかなクラップを巻き起こした“MAGIC WORDS”。昨日のツアー・ファイナルでもやっていなかった静謐な名曲“イノセント”……最後の“ROCKSTEADY”に至るまで、ストレイテナーの楽曲そのものに秘められた豊潤さと美しさが、過去の『NANO-MUGEN』出演時とはまるで異なる形で咲き誇った名演だった。
秦 基博
「どうも秦基博です!」。暗転したアコースティック・ステージで、アコギ1本抱えてたった1人で現れた秦がスポットライトに照らし出される。1曲目“朝が来る前に”の、圧倒的な声量と、それ以上に言葉の端々からあふれんばかりの熱情が、横浜アリーナの空間を支配していく。張りつめるような会場の空気を、「僕も横浜なんですけど。この横浜でやってるナノムゲンフェスティバルに……ナノティバルに呼んでいただいて嬉しいです(笑)」といった独特のユーモアあふれるMCでゆっくりほぐしてみせる。そして、“やわらかな午後に朝食を”“鱗(うろこ)”の揺るぎなきメロディ。「さっき、(ストレイテナーの)ホリエさんが『“アイ”が好きです』って言ってくださったんですけど、今日やる予定がなくて」と言いつつ、最後に披露した“アイ”の極上の歌が、ひときわ強く、凛とした輝きとともに広がっていった。
岩崎愛&Kiyoshi@GUESTReALM
再び4階ゲストリアム・コーナー。今度は『NANO-MUGEN CIRCUIT 2012』大阪会場に出演した岩崎愛が、キヨシ(ここではカホン担当)&宮下広輔(ペダルスチール担当/PHONO TONES)を伴って登場。『NANO-MUGEN COMPILATION 2012』にも収録されている“東京LIFE”などを披露しつつ、「CDを作ってます。ゴッチさんにプロデュースしてもらって……ここにいる全員が買ってくれたら嬉しいです!」と、まさに制作中の新作から“All right”を披露。キヨシがヴォーカルを振られて照れまくるというレアな場面が見られたその頃ーー。
FOUNTAINS OF WAYNE
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アリーナには今度はゴッチ&喜多コンビが登場。USパワー・ポップの雄=FOUNTAINS OF WAYNEを呼び込む前に、ゴッチが気合いを入れて恒例の(?)四股を踏んだところで、いよいよFOUNTAINS OF WAYNEのステージ! いきなり“Bought For A Song”“Denise”“Someone To Love”で荒馬のような強烈なサウンドをオーディエンスの心と身体に心地好く叩き込んでくる。枯れ草薫るアメリカン・ロックのエッセンスと、弾けるポップ・センスと、ジョディのギター・プレイに象徴されるハード・ロック・テイストとを独自のブレンドで調合し、メジャー・コードもマイナー・コードもその1つ1つが光り輝くロックのアートフォームを作り上げたファウンテンズ。「アリガトウゴザイマス!」(クリス) 「また日本に来れて嬉しいよ。アジカンありがとう!」(アダム)と軽やかにオーディエンスに語りかけつつ、“I-95”でアダムがピアノを弾く時には「ピアノ……エルトン・ジョン! いや冗談だ(笑)」(クリス)と嘘コールをしてみたりするお茶目な顔を覗かせたりしながら、初体験のオーディエンスが多いはずのステージとフロアの距離を軽々と近づけていく。昨年リリースしたアルバム『Sky Full Of Holes』からの曲は“The Summer Place”ぐらいにとどめ、強力ナンバーでがっちり固めた内容。終演後にはアンコールを求める歓声が湧き上がったほどだ。
PHONO TONES@GUESTReALM
そして、ゲストリアム・コーナーが入場規制の大盛況! キヨシをはじめ、先ほどアリーナを沸かせたDr.DOWNER・猪股(ここではベース)、宮下(ペダルスチール)、飯塚純(キーボード)によるインスト・バンド=PHONO TONESの登場! 「今日ここに来るの間に合わないかと思って、東京駅から新幹線乗った(笑)」(宮下)とまさかの告白があったり、「今日はPHONO TONESのTシャツを……」(キヨシ) 「こういうのも……」(猪股) 「それDr.DOWNERのでしょ!(笑)」(キヨシ)という場面で笑いを誘ったりしつつ、ジャム・ロック・テイストの曲からディスコ・ビートの楽曲まで幅広く聴かせながら、オーディエンスをゆっくりじっくり、確実に高揚感の彼方へと導いていく。
FEEDER
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そんな中、アリーナのタイムテーブルはいよいよ1日目も残すところあと2組ーーというところで、今度は喜多&山田のMCコンビがオン・ステージ。「さっき、タカさんにセットリスト見せていただいたんですけど、すごいです!」という2人のトークに続いて登場したのは、UKヘヴィ・ロックの雄=FEEDER。1曲目から横浜アリーナに流麗に響き渡るグラント&タカのファルセット! 名曲“Feeling A Moment”だ。そこから“Renegades”“Pushing The Senses”のヘヴィ&ハード・エッジな音像へ雪崩れ込む。出し惜しみ一切なし! ギターを抱えたゴッチを迎えてパワー・ポップ感全開で炸裂させてみせた“Insomnia”の後で「練習1回やったぐらいにしては決まってたね(笑)。でも、本当に呼んでくれてありがとう!」とタカ。「俺、イギリス行って20年経つけど、たまに日本に帰ってくると『洋楽の人』ってなるのね。洋楽だろうと邦楽だろうと関係ないだろって思うんだけど。それをバンドレベルでやってるのが『NANO-MUGEN』だと思ってる」。ひときわ熱い拍手と歓声が広がっていく。“Just The Way I'm Feeling”や“Buck Rogers”に続き、再びゴッチを(今度はゲスト・ヴォーカルとして)ステージに呼び込んで“Idaho”日本語バージョン。終盤には名曲ハード・バラード“High”を配し、最後は“Just A Day”で完全燃焼!
ASIAN KUNG-FU GENERATION
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そして……1日目の最後を飾るASIAN KUNG-FU GENERATIONのステージ。“夜のコール”で生まれた多幸感を“All right part2”へと直結して、でっかい歓喜の渦を巻き起こしていく。「今日はすごく雰囲気がよくて。ありがとうございます!」とオーディエンスに語りかけながら、“迷子犬と雨のビート”“君の街まで”“ループ&ループ”“リライト”と曲を畳み掛けていく。「さっきFEEDERのタカさんのMCでも感激したんですけど……いろんなジャンルの壁がなくなったらいいなと思って続けてきたんで、嬉しいです。いろいろあるけど、この2日間だけは音楽のことだけを考えて、来週に向けてエネルギーを蓄えていってください!」というゴッチの言葉に続けて披露されたのは、新曲“それでは、また明日”。シリアスでハード・エッジな音像と強烈なドライブ感を持つビートが、ぎりぎりとせめぎ合いながら新しい明日をこじ開けていくような、アグレッシブな名曲だ。“N2”のイントロに沸き上がる大きな歓声。でっかいシンガロングとクラップを巻き起こした“アンダースタンド”“君という花”。最後の“マーチングバンド”が、ひときわ力強く響いて……本編終了。

「いい音楽が鳴ってる社会は、豊かな社会だと思うんですよ」ーーアンコールで再び舞台に現れたゴッチはそう話していた。多数のダンサーとともに歌い上げた“踵で愛を打ち鳴らせ”。そして、1日目のフィナーレ“ワールド ワールド ワールド”〜“新しい世界”の壮大な音響を残して、21:30、『NANO-MUGEN FES. 2012』1日目は終了! 2日目はいったいどんなスケールの感激を与えてくれるのか? 乞うご期待!

文/高橋智樹