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片平 里菜 [JP]
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真っ暗なアコースティック・ステージ、スポットライトに照らし出されて登場したのは、福島出身の20歳シンガーソングライター・片平里菜。まずはアコギ弾き語りスタイルで“夏の夜”。清冽な声の内側から瑞々しい感情がほとばしって、聴く者すべての心に水のように染み込んでいく。「今日は短い時間なんですけど、よろしくお願いします!」といったところで、サポート・メンバーを加えて彼女自身、オリジナルでは人生初(!)というバンド・スタイルでの演奏へ(ギターは喜多、ベースは山田のアジカン・コンビが担当!)。やわらかな声質ながら、疾走感あふれるバンド・サウンドをさらに夏風のように高揚感の向こう側へと誘っていくしなやかな力が、その歌から確かに伝わってくる。
「今回、コンピにも入っている“始まりに”という曲をプロデュースさせてもらったんですけど。もう1曲……それが今やった曲で。レコーディングの時もタイトルがなくて、“未定”ってずっと呼んでたんですけど。結局、曲名は何になったんですか?」と訪ねる「プロデューサー」山田に、「……“未定”です(笑)」とおずおず答える片平の姿は、まさに20歳女子のものだ。「弾き語りのライブのほうを頻繁に行っていますので、機会があったら観に行ってください。応援よろしくお願いします!」という山田の言葉に続いて、最後はコンピ盤収録曲“始まりに”。ゆったりとしたバラード・スタイルの曲ながら、そのヴォーカリゼーション越しに雄大な風景を描き出していくーーたった3曲ながら、ポップ・ミュージックの未来を担う「未完の大器」の片鱗を覗かせてくれたアクトだった。

■7月16日

  • 01.夏の夜
  • 02.未定
  • 03.始まりに
文/高橋智樹 | 写真/TEPPEI、古溪一道