
「『NANO-MUGEN FES. 2025』初日・横浜、MAIN STAGEのトップバッターを務めます。俺たちストレイテナーといいます!」……そんなホリエアツシの言葉とともに開演早々から飛び出した“ROCKSTEADY”に応えて、Kアリーナ一面に拳と歌声が高々と突き上がる! 「NANO-MUGEN FES.」がライブハウスでの自主企画イベントだった時代から、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとともにステージに立ってきた盟友・ストレイテナーは、破格のスケールのロックアンサンブルで、11年ぶりの「NANO-MUGEN FES.」開幕に最大級のエールを贈ってみせた。そこから最新アルバム『The Ordinary Road』の“COME and GO”、さらに“シーグラス”“BLACK DYED” “Super Magical Illusion” と次々に楽曲を畳み掛けたかと思うと、ホリエが鍵盤を奏でるピアノセットで“雨の明日”を披露……といった展開で、ロックの強度と多彩な音楽性を惜しみなく体現していく。
「たまたま同じ時期にバンドを組んで、小さいライブハウスで出会って。たくさんカッコいいバンドがいたし、むしろアジカンとかストレイテナーとかエルレとかは、すごく普通のこと、ど真ん中なことをやってたんですよ」。中盤のMCでホリエが、今でもASIAN KUNG-FU GENERATION/ELLEGARDENとリスペクトし合う関係性の理由を語る。「今思えばですけど、『カッコつけ方』が全然違ったんですよね。ど真ん中を目指してるんだけど、全然違うカッコつけ方をしていて、それを研ぎ澄まして今に至っているからかなと思います。そういう仲間がいて、本当に幸せです」……満場の拍手が湧き起こる中、ピアノセットで演奏したのは“MARCH”。凛と美しいサウンドスケープ越しに、揺るぎないロックと魂が奮い立つ、珠玉のひとときだった。
後半の“Skeletonize!”からライブはさらなるクライマックスへと昇り詰めていく。ホリエが再びギターを構え“KILLER TUNE”でアリーナを揺らし、さらに4人一丸の激奏が冴える“TRAIN”で、Kアリーナは歓喜の果てへ極限爆走! “彩雲”で清冽な歌を響かせ、ラストの“Melodic Storm”でアリーナを埋め尽くす拳とシンガロング! すべての音が止み、4人で肩を組んで一礼する姿に、熱い拍手喝采が降り注いでいった。
文/高橋智樹 | 写真/TEPPEI KISHIDA
開演前MCでASIAN KUNG-FU GENERATIONメンバーが揃って登場――だが、キヨシ一人だけ衣装が違う。「これは間違えたわけじゃないんです! 2月に一人でジャカルタに行った時に、VOICE OF BACEPROTのメンバーと一緒にご飯を食べまして。その時にプレゼントしてくれたTシャツです!」とキヨシがアピールしてアリーナを沸かせる。昨年には英グラストンベリー・フェスティバル出演も果たしたインドネシア発の女性メタルトリオ・VOICE OF BACEPROT、「本当にカッコいいバンドで。僕らも音源を聴いて『絶対に呼びたい!』って決めたバンド」というゴッチの言葉通り、開演早々“[NOT] PUBLIC PROPERTY”のオリエンタルな歌声と強烈なリフでMAIN STAGEを震撼させていく。ヒジャブを纏った佇まいやメンバーの立ち居振る舞いなどはどちらかといえば上品かつ端正なものだが、ワイルド&アグレッシブな爆音と絶唱を突き上げていく姿は、3人の中に揺るぎないヘヴィメタルの精神が息づいていることを窺わせる。「Hello everyone!」と語りかけるのはボーカルのマーシャ。「実は、ずっと前から、日本でライブをやりたくて。だから、今日みんなに会えて、本当に嬉しいです」と日本語で呼びかける姿に、熱い拍手が広がる。
”WHAT'S THE HOLY (NOBEL) TODAY?”ではボーカルの突き上げる拳と歌声に応えて、アリーナに拳とシンガロングが広がり、LEDスクリーンに映し出された「STOP WAR WE HATE WAR」の文字が強烈なメッセージ性をもって迫ってくる。”PUT THE GUN DOWN”のアグレッシブな音塊、
”MIGHTY ISLAND”のディープなリフワーク、”RENEGADE SHEEP”で描き出す轟音の絶景……。”MADNESS OF THE PRESENT CENTURY” ”GOD, ALLOW ME (PLEASE) TO PLAY MUSIC”といった明快な楽曲タイトルにも象徴される熱い衝動が、1曲また1曲とオーディエンスを内面から奮い立たせていくのがわかる。鮮烈な衝撃を「NANO-MUGEN FES.」の歴史に刻んだVOB、去り際の「ありがとうございます。また会いましょう」の挨拶と「TERIMA KASIH(ありがとう)」の文字に、歓喜の喝采が湧き起こっていた。
文/高橋智樹 | 写真/MITCH IKEDA
ASIAN KUNG-FU GENERATIONと同じく1990年代中盤に横浜で結成された盟友バンドでもあり、「NANO-MUGEN FES. 2008」や「NANO-MUGEN CIRCUIT 2013」にも出演しているSPECIAL OTHERS、今回はアコースティック編成のSPECIAL OTHERS ACOUSTICとしてSIDE STAGEに登場。芹澤"REMI"優真が奏でるグロッケンの響きが、大空間に“LIGHT”の涼やかなメロディを刻み、穏やかで豊潤なアンサンブルが場内の熱気と心地好く響き合う。「11年ぶりの『NANO-MUGEN』、お招きいただきありがとうございます! 最初のアジカンチルドレンですからね、我々が。我々がまだコンビニ前でカップラーメン食ってる頃に、アリーナツアーに呼んでくれて」と喜びを露わにする芹澤に、高らかな拍手喝采が湧き起こる。
“LINE”で繰り広げるオーガニックなアンサンブルの中、芹澤がオーシャンドラムで奏でる波の音が、当日のあいにくの荒天を忘れさせるような晴れやかな海辺の風景をKアリーナに描き出し、グロッケン&メロディオンの音色とリズムの躍動がオーディエンスの心と体を揺らしていく。“WOLF”では宮原"TOYIN"良太のクラップにアリーナが手拍子で応え、場内の温度を刻一刻と高めてみせた。
宮原「気づいてる方いますか? SPECIAL OTHERSとアジカン、一緒に曲出してるんですよ!」
芹澤「2011年にね。後藤くんから『シンセあげるよ』って言われて、横浜から原チャリで逗子までもらいに行って……」
宮原「電車で行けばいいじゃん(笑)。その曲、今日やると思いますか?」
というMCを受けて登場したゴッチが「長いよ!(笑)。煽りすぎでしょ!」と思わずツッコミを入れる場面に、オーディエンスの熱い歓声が降り注ぐ。披露する楽曲はもちろん、SPECIAL OTHERS×後藤正文のコラボ曲“DANCE IN TSURUMI”。ゴッチの♪ラララ~のコーラスに合わせて広がったあたたかい歌声は、「NANO-MUGEN FES.」の多幸感そのものだった。
文/高橋智樹 | 写真/TEPPEI KISHIDA
ELLEGARDENが17年ぶりに「NANO-MUGEN FES.」に帰ってきた! 熱い歓声を受けて登場した細美武士/生形真一/高田雄一/高橋宏貴が“Salamander”を轟かせた瞬間、圧巻のシンガロングが大空間を埋め尽くし、「NANO-MUGEN FES.」とELLEGARDENの新たな時間が動き始める。「行こうぜ!」の細美のシャウトに応えて、場内の歌声がさらに高まったところで、最新アルバム『The End Of Yesterday』からの“チーズケーキ・ファクトリー”や“Mountain Top”でも割れんばかりの大合唱を呼び起こしてみせる。“Fire Cracker”で4人一丸となって描き出す、紅蓮の爆走感! “Space Sonic”でアリーナ狭しと巻き起こる、地鳴りのような魂のコーラス! “Middle Of Nowhere”での生形のエモーショナルなソロフレーズが、オーディエンスの心をさらに昂らせ、バンドとオーディエンスが刻一刻と高揚の頂へと昇り詰めていく。
「すごい景色です!」と会場を見回して感慨深げに語る生形。「『懐かしい』とかじゃなくて、今のELLEGARDENを演奏するので!」。細美が「『アジカンにバトンを繋ぐ』とかじゃなくて、やりづらくなるようなライブがしたい」と観客の熱気と歓喜を煽ったところから、“The Autumn Song”“風の日”“Missing”と全曲アンセム状態の激演を繰り広げ、アリーナを歓喜の渦へ巻き込んでみせる。「アジカンの時間も丸々演奏したいぐらい今日は楽しい」という細美の言葉からも、この日のアクトの確かな充実感が滲む。
その後は“Strawberry Margarita”から“ジターバグ”へ流れ込み、“Make A Wish”では細美が観客の熱唱にボーカルパートを委ねる場面も。“Supernova”を経て「最後の曲は、俺の友達のホリエとゴッチに捧げます」と響かせたのは“虹”。《積み重ねた 思い出とか/音を立てて崩れたって/僕らはまた 今日を記憶に変えていける》――今を生きるELLEGARDENの存在証明の如き強靭な歌とアンサンブルが、満場のシンガロングとハイジャンプを巻き起こしていった。演奏後にギターを頭上に掲げ、両腕を高く掲げた細美の姿に、割れんばかりの歓声が降り注いだ。
文/高橋智樹 | 写真/MAKI ISHII