ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES.2025 In Yokohama

BECK『BECK Live in Japan 2025』 | 2025年5月28日(web)・29日(thu)
The Adams『NANO MUGEN MINI TOUR 2025』 | 2025年6月3日(tue)

BAND REPORT6/1 sun

6/1 sun YeYe

「NANO-MUGEN FES.」オーガナイザー・ASIAN KUNG-FU GENERATIONの熱演の興奮冷めやらぬアリーナで、SIDE STAGEにはたった一人、セミアコのギターを抱えて立つ華奢な女性の姿が。「NANO-MUGEN FES. 2014」では「Ken's Cafe」に出演していたYeYeだ。しかし、“だけどそれは愛”を歌い上げる秘めやかながら伸びのある声、吐息とファルセット混じりの独特のボーカリゼーションが、広大なアリーナを一気に虜にしていくのがわかる。軽く歪ませたセミアコで軽やかなカッティングを刻みながら、YeYe×BASI名義の楽曲“おとな”、さらには“暮らし”の澄んだ歌声を響かせ、心地好い魔法のような時間を描き出していく。「初めましての方も……あ、曲いっぱいあるから話す時間が1分くらいしかなくて」と、演奏での凜とした佇まいとは一転して素朴な語り口が、ステージとオーディエンスの距離を刻一刻と狭めていく。

「最近やってる、大好きな曲のカバーがあるんですけど……」と、Cat Power“Sea of Love”のカバーを披露。ひとり弾き語りというシンプルなスタイルながら、その奥には確かにオルタナ的な芯の強さを感じさせる。しなやかなアルペジオと妖しく融け合う“どれも美しい”の歌声に、Kアリーナの観客が酔い痴れたところへ、「もうすぐ大きいステージ始まりますから、トイレ行きたい人は今のうちに……」と照れくさそうに語りかける姿も、YeYe特有の飾らないコミュニケーションの糧になっているようだ。ラストの“水面に、アイス”では、YeYeの呼びかけに応えて巻き起こった手拍子に「厚かましいんですけど、もうちょっとゆっくり……」とリクエストして会場を沸かせたり、音楽以外でも終始朗らかな時間が流れていた。

SET LIST

  • だけどそれは愛
  • おとな
  • 暮らし
  • Sea of Love(Cat Power cover)もっと前に原曲あり
  • どれも美しい
  • ゆらゆら
  • 水面に、アイス

文/高橋智樹 | 写真/TEPPEI KISHIDA

6/1 sun The Adams

幕間のMCで登場したASIAN KUNG-FU GENERATION・ゴッチが「この後はね、The Adamsというバンドをインドネシアから迎えました! 向こうのレコード屋でアルバムを買って、普通に大ファンになっちゃって。Weezerとかが好きな人には刺さると思う」と話していた通り、アリオ(Vo・G)/サレ(Vo・G)/ギギ(Dr・Vo)にサポートキーボード&ベースを加えた5人編成でジャカルタ発・The Adamsが響かせたのは、パワフル&カラフルなインディーロックの結晶というべき、圧倒的な音圧のサウンドスケープ! 幕開けを飾った“MASA-MASA”の爆発的なポップ感がアリーナを震わせ、アップテンポの痛快な“PELANTUR”のラスサビでは高らかなクラップを巻き起こしてみせる。「ヨコハマ~!」と呼びかけながら、“WAITING”のアグレッシブなロック感、“ESOK”の輪唱アウトロの呪術的な美しさで、観る者を刻一刻と惹きつけていった。

“HANYA KAU”の美メロとハーモニーで一面のクラップを巻き起こし、「どうだった? 楽しんでる?」とサレが語りかけた後で、“TIMUR”ではジェノサイドに抗う想いを掲げてみせる。キャッチーな楽曲と骨太なメロディの裏側に、「社会的主張をポップに鳴らすべき理由」を確かに備えているバンドであることが、フェスのアクトの限られた時間からも如実に伝わってきた。

「ありがとー、ヨコハマ! NANO-MUGEN!」と呼びかけながら、“KONSERVATIF”ではアリーナを満場のクラップへと導き、「OK, louder!」とさらに大きく熱く煽っていく。熱演の最後は極彩色パワーポップ“HALO BENI”。間奏ではアリオ&サレが絶妙なツインリードのソロを決めつつ、《Halo…》《Beni beni beni…》のコール&レスポンスで会場を沸かせてみせた。演奏を終え、舞台上でメンバーが記念撮影する中、BGMで流れていたのはThe AdamsによるASIAN KUNG-FU GENERATION”MAKUAKE”のインドネシア語カバー。ステージを去る瞬間まで、音楽への想いとメッセージに貫かれた、目映くも真摯な熱演だった。

SET LIST

  • MASA-MASA
  • PELANTUR
  • WAITING
  • BERWISATA
  • ESOK
  • HANYA KAU
  • TIMUR
  • KONSERVATIF
  • HALO BENI

※END BGM MAKUAKE

文/高橋智樹 | 写真/MITCH IKEDA

6/1 sun くるり

2日間の終演が迫る中で登場したのは、「NANO-MUGEN FES. 2014」以来の出演となるくるり。サポートメンバーのあらきゆうこ(Dr)・野崎泰弘(Key)・松本大樹 (G)とともに舞台に姿を見せた岸田繁&佐藤征史、まずは“琥珀色の街、上海蟹の朝”のゆったりとしたグルーヴでアリーナとギアを合わせ、オーディエンスの体と心をじっくりと揺らしていく。そして “ばらの花”。時代を超えて愛されるメロディが、滋味あふれる歌声とともに広がっていく。さらに、岸田のテレキャスターのアルペジオから流れ込んだ“California coconuts”が、狂騒とは一線を画したフェスの祝祭感を呼び起こし、アリーナを高揚の果てと導いていく。「ゴッチと同い年です! ゴッチじゃないですけど、知ってる曲も知らない曲も、自由に楽しんでいってください」と語りかける言葉に、熱い拍手が広がる。

“愛の太陽”の晴れやかな多幸感から“loveless”、“ハイウェイ”へ……と音楽の包容力そのもののようなステージを繰り広げるくるり。“ブレーメン”のしなやかなロックシンフォニーの最後、プログレ的な加速を見せる展開に、場内から高らかなクラップが巻き起こる。「結局キヨシくん、カレー持ってきてくれへんかったな。食べたかったのに……」と、先ほどASIAN KUNG-FU GENERATIONのステージに“Little Lennon”で客演した際の伏線回収(?)的な岸田のMCが、オーディエンスのテンションを軽やかな笑いでほぐしてみせた。

終盤は“ロックンロール”のパワフルなビート感と極彩色のコーラスでシンガロングを誘い、“虹”の雄大なアンサンブルでロックバンド・くるりの真髄を響かせる。ASIAN KUNG-FU GENERATION”Little Lennon”の再録バージョンを岸田が編曲・プロデュースしたことに触れ、「来年50になる年にね、一緒に仕事できるようになるとはね、縁っていうか、ありがたいなあって思いますね。出会いとか縁っていうのは、奇跡みたいなもんだなあと」。そんなふうに語る岸田の言葉に続けて、最後に披露された“奇跡”が、ひときわ伸びやかに響き渡っていった。

SET LIST

  • 琥珀色の街、上海蟹の朝
  • ばらの花
  • California coconuts
  • 愛の太陽
  • loveless
  • ハイウェイ
  • ブレーメン
  • ロックンロール
  • 奇跡

文/高橋智樹 | 写真/TEPPEI KISHIDA

6/1 sun BECK

「NANO-MUGEN FES. 2025」2日間のグランドフィナーレを飾るのは、1990年代から現在まで唯一無二の存在として、アメリカのみならず世界のシーンを牽引し続けるアーティスト・BECK! 「NANO-MUGEN FES.」のオーガナイザーであるASIAN KUNG-FU GENERATIONが、自ら最終枠を空けて招聘した、念願のヘッドライナー実現である。MAIN STAGEに組まれた一段高い足場と、その上に設置されたドラム・キーボード・パーカッション……といったフェスらしからぬセッティングが、いやが上にもカリスマの到来を予感させる中、白のベルボトムにスカジャン、サングラスという出で立ちで舞台に登場したBECKが、ギターを構えてガッツポーズ! その逆光のシルエットだけで、巨大なアリーナの空間を一瞬で支配すると、冒頭の“Devils Haircut”からアリーナが波打つほどの高揚感を描き出してみせる。

元Jerryfish・ジェイソン・フォークナー(G)&ロジャー・マニングJr(Key)をサポートメンバーに擁してこの日のステージに臨んだBECK。 “Mixed Bizness”のアグレッシブな切迫感から、マイクぶん回しながら“The New Pollution”、さらに“Girl”へ流れ込んで一面クラップ&シンガロングへと導く圧巻のヴァイブ。“Qué Onda Guero”では「Hands up!」と呼びかけ場内一面のハンドウェーブの風景を生み出し、“Nicotine & Gravy”のクール&アンニュイなテイストの根底にタフなドライブ感を漂わせ……といった具合に、ロックスターもポップスターも軽やかに凌駕するようなマジカルなステージを展開。「わーお! 横浜!」と観客に呼びかけ“Wow”で熱いコール&レスポンスを巻き起こし、“Gamma Ray”のアングラサーフロック的音像の中でBECK自身がギターソロを決めてみせる。さらに“Beercan”ではラップでビートをリードし、シンガロングとハンドウェーブの渦を巻き起こす――。オーディエンスの熱気と歓喜も、曲が進むごとに高まる一方だ。

終盤にはBECKがセットの階段に腰を下ろし、アコースティックギターでスライドソロを弾き始める。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバーテイクでもお馴染みの“Loser”! イントロからアリーナ一面に観客の手が高々と挙がり、場内一丸のシンガロング! 時折BECKがボーカルパートを観客に委ねるほどの大合唱に、思わずBECKからも「ありがと! Amazing!」と歓喜の言葉が漏れる。インダストリアル重轟音×ポップなメロディの化学変化が痛快な“E-Pro”で本編を終えると、BECKひとりで“One Foot In The Grave”をブルースハープとともに披露、さらに翌日が誕生日だというジェイソンを♪Happy Birthday to Jason〜のKアリーナ一丸大合唱で祝い、“Where It's At”で大団円! アンコールまで含めトータル18曲という、ワンマンライブばりの濃密なステージが、「NANO-MUGEN FES.」の歴史にあまりにも重要な1ページを刻みつけていった。

SET LIST

  • Devils Haircut
  • Mixed Bizness
  • The New Pollution
  • Girl
  • Qué Onda Guero
  • Nicotine & Gravy
  • Wow
  • Gamma Ray
  • Beercan
  • Everybody's Got to Learn Sometime(The Korgis cover)
  • Lost Cause
  • Dreams
  • Up All Night
  • Sexx Laws
  • Loser
  • E-Pro
  • One Foot In The Grave
  • Where It's At

文/高橋智樹 | 写真/MITCH IKEDA

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