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おそらく今年の洋楽アクトの中では最も「?」と「!」の嵐をロック・ファンの間に巻き起こしたに違いないアーティスト……90年代USオルタナティヴの結晶、THIRD EYE BLIND。「5年ぶり再始動」「そして10年ぶり来日」という語感が生むレイドバック感を、3EBは1曲目の“losing a whole year”できれいさっぱり解消してみせた。

どっしりしたビート、ギター・トニーのファルセットのコーラス、そしてVo・G=スティーヴンの力強いヴォーカリゼーション!
 2人のギターが秘めやかに絡むイントロからギターがラウドに弾ける“Wounded”にも、静寂と爆裂サビを行き来する“Narcolepsy”にも、ロックのドラマとロマンがびしびしとみなぎっている。

「ヨコハマ! ゲンキデスカ!」とハットをかぶったスティーヴン、さらに“Graduate”“Danger”とアッパーでアグレッシヴな楽曲を畳み掛ける。ヴァイオリンをフィーチャーした新曲“Non-Dairy Creamer”の後で「タノシンデ!」と呼びかけたり、フロアからの「I love you!」の声にも「I love you too!」と返したり、とスティーヴンも実にゴキゲンのようだ。“Don't Believe A Word”のラウドなサウンドをバックに繰り広げるスティーヴン&トニーの絶唱コール&レスポンス(?)も最高。

ワンマンでもやっていたらしいLED ZEPPELINの“Kashmir”のヘヴィさには思わず戦慄したし、スティーヴンがアコギで歌い上げた“Jumper”の豊潤さに会場の空気がじっくりほどけてあったまっていく。「ASIAN KUNG-FU GENERATIONドモアリガト!」と主催者=アジカンに呼びかけるスティーヴン。

“How's It Gonna Be”のコーラスかかったギターのアルペジオにすっかり酔いしれる1万人のオーディエンス……そこに降り掛かったのは、“Semi-Charmed Life”の♪トゥットゥットゥー、のコーラス!
 ここまでの演奏のあまりの充実ぶりに、3EBのデビュー・アルバムを600万枚売り上げることになったシングル曲“Semi-Charmed Life”のことをすっかり忘れてしまっていた。アリーナも慌てて気持ちのギヤを入れ替えて最後の大盛り上がり!

 スティーヴンはステージの端から端まで歩いて「アリガト!」と歓声に応えて帰っていった。「かつて世界を魅了したバンド」が、今でも世界を貫ける攻撃性と表現力を存分に備えていることの証明のようなアクトだった。

01.losing a whole year
02.Wounded
03.Narcolepsy
04.Graduate
05.Danger
06.Never Let You Go
07.Non-Dairy Creamer
08.Motorcycle Drive By
09.Don't Believe A Word
10.Kashmir
11.Jumper
12.How's It Gonna Be
13.Semi-Charmed Life

文/高橋智樹 | 写真/中河原 理英